ウソ日記

ない。ある。

ワサビ

 ごま塩の存在が理解できない。

 タバスコの辛みは分かるようになった。だけどワサビはまだだめだ。鼻につんとくるのがいけない。泣かされてるようでいけない。私の事をかまってと言ってくるようでいけない。

 家事をしていると気になる存在の一つに、「ケコ」がある。私の家にはゴキブリのたぐいは出ないのだが、ケコはよくでる。白い綿埃のような姿で、昆虫とは違う動きをする。夫が、あ、これはケコだよ。と言うのでその名と知れた。
「主婦がね、家のことをおろそかにしていると出るんだよ。」
と、月に一度ぐらいの割でわが家を訪れる姑が言うが、それは言いがかりだと思う。とくに「主婦が」あたりが。それに第一、掃除をしないからとか生ゴミを片付けないからとかじゃなく、「家事をおろそかにする」から出るものって何だ。もののけのたぐいか。夫にそう言って話すと、家でも良く出たけどなあ。と笑った。

 ところが最近、ケコがめっきりと出なくなった。

 ごま塩の存在はいまだに理解できない。祝いの席の赤飯にかかっているのは、それでも何とか我慢する。ショウガは好きだ。人に頼らない美しさがある。ワサビはだめだ。だけど最近、回転寿司の気の抜けたのなら食べられるようになった。休みの日に子供をつれて、たまに行く。

「そういや、ウチの親もワサビ嫌いなんだよな。」と、エンガワを食べながら夫が言った。
「ハハハ、そんなオチ?」
と、私は答えて、鉄火の皿を取った。何の事よ?と夫が聞くので、何でもないと答えておいた。